お箏のお道具について①
▶︎楽器のこと
伝統的なお箏は13絃の楽器です。長さは約180センチ、重さは楽器によって異なりますが10kg〜15kgほどあります。古くは各地方によって長さや細かな工夫が異なりましたが、山田流箏曲が江戸で起こってから江戸を中心に作られた楽器が現在の標準となり、すべての流派でほぼ統一されたサイズの楽器が使われています。
箏糸(絃)には古くから「絹糸」のものがあり現在でも使われています。しかし、現代の新しい音楽を演奏するには耐久性に難点があります。現在は「テトロン製の箏糸」が広く使われています。絹糸より耐久性で勝り張力も強くできますので幅広い楽曲に対応します。
箏糸は消耗品で練習を重ねると磨耗して切れてしまいます。また、次第に糸が伸びて弾力性が衰えてきます。普通にお稽古をなさる方なら2年ほどはそのままお使いのようです。年に1回の発表会に合わせて箏糸を締め直す方もいらっしゃいます。
楽器の長さは180cmほどですが、箏糸は3m以上の長さがあります。普段は箏糸の半分ほどの長さしか使わず、余った部分は輪にして楽器の端にまとめておきます。練習によって切れてしまった時にはこの輪の部分を使うように糸の左右を入れ替えて締め直します。この作業を「天地」と言います。新しい箏糸で締め直す時には「新糸(あらいと)にする」と言います。「天地」の作業は¥7.000〜¥8.000、「新糸」にする際には糸代も含めて¥15.000〜¥18.000ほどの費用がかかります。
箏糸の締め直しは熟練の職人さんでも1時間以上かかる力仕事です。お稽古をなさっている皆さんがご自分でできる作業ではありません。特に楽器の良い音は職人さんの技に負うところが少なくありません。
最近はインターネット上で格安な楽器を見かけるようになりました。しかし、楽器を良い状態で長く大切に使おうとお考えならば職人さんとのご縁が大切です。また、残念なことですが海外で生産された粗悪な楽器も出回っていてお稽古をなさる皆さんでは見分けがつかないことがあります。楽器を購入なさる際には先生にご相談の上、信頼の置ける楽器店からご購入いただき長く大切にお使いいただけるのが最良と考えます。
立奏台に置いた13絃のお箏
25絃箏の演奏
低音用の17絃
糸締前の様子
糸締作業中の様子
楽器の裏側にある音穴